タイ民族楽器ピン定番フレーズ(その4)
最強モーラムライブ!
モーラムユニットライブ行ってきました!
お客さんも大勢集まっていて、平日開催でしたが大盛況でした。
soi48の厳つい低音モーラムDjに始まり、井出健介と母船、attc vs Koharu、と徐々に会場は盛り上がってついに、モーラムユニットの登場で会場の盛り上がりは爆発
ポーさん、アンカナーンさん人間国宝ユニットのモーラムを日本で聴けるとは、まさに夢のようでした。というより、日本で生モーラムが聴けただけで夢のようでした。
やたらと低音の効いたカラオケがイサーンでした笑。入念なサウンドチェックがされている気がします。
ウパニくんはケーンだけでなくピンも演奏してくれたのが個人的に良かったですね。
ウパニくんのピン演奏は古典的なフレーズを丁寧に弾いている印象でした。(ケーン奏者なのでピンでは変わったことはあまりしないのかもしれません。)ライブの後楽屋にお邪魔させていただいて、ウパニくんのピンを見せてもらいました。
ピンの定番のヘッドの龍がはじめから付いていないデザインでした。
ボディとネックもセパレートでエレキギターのようにボルトオンネックで、
かなり現代的なピンと言えるでしょう。
綺麗な抜けのいい音だなと思っていたら、ピックアップはセイモアダンカンでした。
タイに行きたくなる最高のイベント!痺れました。
今回はウパニくんも演奏していた古典的なフレーズからです。
タイ民族楽器ピン定番フレーズ(ハイフレット編)
今回はピンの高音域(ハイフレット)を使ったものを紹介します。
たった10秒ですがこの部分を分解、再構成することで終わることなく、連続で演奏を続けることができます。分解する切れ目はこの場合、譜面上に記されているA,B,C,D の4つの部分に分かれます。
ポイントとは2弦開放のA音を挟むところです。ピンは高音域になると開放2弦がよく使われ、リズムに特徴を出します。
演奏例
2:02〜
最後に
モーラムの音源を流しながら
今回のフレーズを繰り返し演奏してみてください。
いかにもなイサーン音楽が弾けます。笑
それではモーラムライブの思い出に浸りましょう。
タイ民族楽器ピン定番フレーズ(その3)
これぞタイ・イサーン的フレーズ
今回はピン音楽で演奏時間の大半のつなぎフレーズの解説です。
一回の演奏で何回も登場するものなので、
今回のフレーズが弾けるだけで、急にタイっぽさ、イサーンぽさが激増する超定番フレーズです。
ピン以外の楽器でも演奏されることが多いのでイサーン音楽的汎用性も高いです。それでは例によって譜面を見ていきましょう。
今回のタイ民族楽器ピン定番フレーズ
参考動画は今回もトンサイさんからです。
0:52部分
0:38部分
とても短いですが、今回はシンプルな形の2つを紹介します。
Eの1弦開放を挟む音の並びで、16分音符のリズムに注意して弾くことがコツです。
とにかくピン、イサーン音楽頻出なのでどの楽器でもいいので連続して弾いてみてください。
バリエーションもとても多いです、他の演奏も見ていきましょう。
実際の演奏を聴く
วงแห่ คนภูธร ลำเพลิน 3ช่า ลำซิ่ง
16:06,16:16部分他多数
เปิดข่องวงพิณห่าวบ่าวอีสาน【Esarn-Lampern】
0:26部分他多数
少しアレンジがかかっていますが、同じようなフレーズが使われていることがわかるかと思います。
他の楽器の場合
1:52部分他多数
最後に
つなぎフレーズは非常にアレンジも多く、バリエーションも豊かです。
しかし、基本を体得してしまえば自分のアレンジを加えることができ、演奏家としての個性、深みが増します。
コツコツ習得していきましょう。
タイ民族楽器ピン定番フレーズ(その2)
いつものように定番フレーズ
今回も例によって定番フレーズです。
ピン音楽は弾けるフレーズの数がどれだけあるかということがとても大切です。
要所要所に定番フレーズを挟んでいって、聴衆の心をつかみ、盛り上げることが大切です。しかしこれが外国人からすると、定番と言っても予備知識がないので、何が定番か判断できないため中々難しいです。
今日も、ひとつずつ習得していきましょう。
頻出曲フレーズ
いつものおさらい
チューニング(3弦E、2弦A、1弦E)
このフレーズの特徴は6小節目から和音が入ってきているところですね。和音と言っても上下の弦を同じフレットで同時に押さえているので単純です。
アレンジを聴く
今回はピン音楽で最も古典的と言われるトンサイさんの演奏から聴いていきましょう。
1:43〜1:57部分
5:13〜5:26部分
最後に
経験者の方は特に、タイ音楽を五線譜で表すことに抵抗がある人がいるかもしれません。しかし、タイ譜面だとどうしても把握しきれない部分があるので、あえてこのブログでは自分の忘備録も兼ねて引き続き五線譜で行こうと思います。
大まかなリズム、音価を五線譜で把握してから、崩していくのがいいんじゃないかなあと自分は思います。
とにかく定番フレーズを知っていると楽器が弾けなくても、タイに行った時にイサーンのおばちゃんたちと盛り上がれるので知っておいて損はなし!
タイ民族楽器ピン定番フレーズ(その1)
定番フレーズを弾こう
前回はオープニング独奏を弾きましたね。
前回は長かったので今回は短いですが、重要度は高いです。
ピンを弾く上では外せないイントロフレーズなので、今回もマストフレーズです。
ラムシンでも使われている定番中の定番なので聴き覚えがあるかもしれません。
定番イントロフレーズを弾こう
まずはおさらい
チューニング(3弦E、2弦A、1弦E)
今回のタイ民族楽器ピン定番フレーズ
前回と違ってリズムもはっきりしているので、覚えやすいですね。
今回のフレーズの鍵もやはりアレンジです。装飾音をガンガン追加していきましょう。
7〜8小節の短いフレーズはピンの中でも万能の超頻出フレーズなので、覚えておきましょう。
アレンジ例を聴く
ลำเพลิน4ภาค เหมาะสำหร้บมือใหม่หัดเล่นลายลำเพลิน ทางเดินของลายพิณ
1:17-1:30部分
曲の頭にイントロとして使っていますね。
2:14-2:20部分
この場合は曲中に織り込んで演奏しています。
意外と曲中にフレーズを挟むのは難しいです。というのは、弾きながらフレーズを思い出さそうとすると頭の中が忙しくて、パニックで中々思い出せません。フレーズをさらっと弾くには体に染み込ませるこれが一番大事です。
ラムシンでの使用例
タイに行けば、流れているインリー・シーヂュムポン(หญิงลี ศรีจุมพล)からです。
そのままイントロとして使われています。
ขาขาวสาวลำซิ่ง - หญิงลี [Official MV]
終わりに
現代のピンの演奏ではラムシン、ルークトゥンのカヴァーが大抵演奏されますが、その逆で、ピンで頻出のフレーズがラムシン、ルークトゥンで使われていましたね。
次回からも、頻出フレーズを紹介していくので、聴き覚えがあるメロディーがあると思います。
ご指摘ありましたらコメント欄までお願いします。
ピンのオープニング独奏を弾こう
タイ伝統楽器ピン必修フレーズ!オープニング独奏を弾く
前回、前々回とピン音楽の構成について解説しました。
YOUTUBEの動画を見て、少し構成が聴き分けられるようになったと思います。
やっぱり楽器は弾かないと面白くないですね。
それでは実際に弾いていきましょう。
1.オープニング独奏部分を聴く
อาจารย์แต๊กบรรเลงพิณลาย 4 ภาค【Esarn-Lampern】
0:00〜0:40部分
上の動画を見ると独奏部分がわかるかと思います。
ピンの中でも全流派共通のマストフレーズ!いきなり少し長いですが習得しましょう。
タイ、イサーンの奥地でもこのフレーズさえ弾けたら、何があっても大丈夫!覚えといて損はなし!!
2.ピンのスケールのおさらい
ピンのスケールのおさらいをしていきます。
詳しくはこちらに記載されています。
今回からこのブログでは五線譜で解説していこうと思います。五線譜での対応表がこんな感じになります。
3.実際に弾いてみよう!
見にくいですが、参考用の譜面と打ち込み音源です。(ピンのチューニングはEAEの順番です。)
基本的にロングトーンはトレモロピッキングで弾いていきます。音符に斜線が引いてあるのがその部分です。
これを基本にアレンジしていきます。
4.アレンジをする
タイの音楽はアレンジ重視です。楽譜のように弾けてもいいですが、好きなように解釈してアレンジしましょう。
アレンジの例です。
THE PARADISE BANGKOK MOLAM INTERNATIONAL BAND LIVE AT WASSERMUSIK FESTIVAL, [HKW] BERLIN 2013
0:20〜1:00部分
ลาย กลองยาวทำนองพ่อทองใส ทับถนน บรรเลงโดย อ.เบียร์ ทับถนน vs อ.ทองใส ทับถนน
0:00-0:20部分
アレンジがどれほど重要かわかりますね。五線譜であらわすとリズム、音価が決められているような気がしますが、弾く時は無視しちゃって構いません。
原型がわかる程度、終わりがバンドメンバーに伝わっていればどう弾いてもいいじゃないですかね。長さも全然違いますね。
アレンジのよくあるパターンは、一部を何度も繰り返す、ハンマリング、プリングで装飾音をつける、違うフレーズとくっつけるとかです。
動画を参考にして個性的なフレーズを弾きましょう。
終わりに
次回からこんな感じで、フレーズを中心に進めていきたいと思います。
タイ語譜面だとリズムがどうしてもわからない部分があるので、五線譜で進めていきます。次回からは短めの予定です。
ピン音楽を構成要素を踏まえて聴く。
実際に構成を聴き分けてみる
前回の投稿で、タイ伝統楽器ピンの音楽の4大構成要素について解説しました。
これを踏まえて実際の演奏を聴いていきたいと思います。
今回はこちらの演奏を解説します。
แต๊ก ลำเพลิน บรรเลงพิณ งานผ้าป่ามือพิณ อ.ลืออำนาจ จ.อำนาจเจริญ
少し地味ですが基本的な演奏スタイル(Lampern)なので取り上げました。
※演奏は1:06から始まります。
構成要素を踏まえて聴く
この演奏を前回の4大要素を踏まえて聴くと下図のようになります。
これを見ながら聞くと「つなぎフレーズ」と、「曲」の切れ目がわかるかと思います。
しかし、この動画以外の演奏を始めて聞いた時、フレーズの切れ目がわかりにくいかと思いますので、再度、「つなぎフレーズ」と、「曲」の聴き分けについて解説します。
つなぎフレーズの特徴
このフレーズは曲と曲をつなぐものなので、一回の演奏で何度も繰り返し聴くことがあります。
この演奏の場合
2:28〜3:07
4:55〜5:26
で、似たフレーズ、同じフレーズが何度も使われていることがわかります。
これを、「つなぎフレーズ」として理解していくと、演奏の構成が徐々に解読されていくかと思います。
「曲」部分の聴き分け
こちらの方が聴き分けやすいです。
最大の特徴は、演奏を通して1回程度しか使用されないという点です。
図で解説した演奏を見ても、「曲」部分は各1回づつしか演奏されていないのがわかるかと思います。
次の特徴は、ロングトーンが多い点です。
ピンは基本トレモロピッキングで音の隙間を埋めていくのですが、曲部分では例外的に曲を表現するためにロングトーンが多用されます。
下の動画の場合、0:57から早弾きが伸びのある「曲」部分になっていることがわかると思います。
終わりに
当ブログでは構成要素「つなぎフレーズ」や「曲」と呼んでいますが、他にタイ語などで、もっと正しい呼び方があるかともいます。内容も他の解釈ができるかもしれません。当ブログの情報は私がタイで教わったものが中心なので、流派によって考え方が違うものがあるかと思います。その際はどうぞご指摘をお願い致します。
ピン音楽の構成要素
ピンで曲を弾くコツ
前回の記事で
ピンのどの音を使うかわかりましたね。
これがわかるだけで、YOUTUBEなんかを見ながら弾ける部分、フレーズはぐっと増えたかと思います。
しかし、ここで壁にぶつかるかと思います。
そうです、「演奏が長くて覚えきれない」という壁です。
長く覚えにくいピンの演奏
例えば
ลำภูไท & ลำเพลิน [Official MV]
この動画は2016年9月27日来日予定のケーン奏者ポンサポーン・ウパニさんのピンの演奏です。長いですね。12分もあります。
อาจารย์แต๊กบรรเลงพิณลาย 4 ภาค【Esarn-Lampern】
私の師匠Tak Lampernさんによるデモ演奏ですがこれも10分もあります。
พิณทิพย์อุดร : พิณซิ่งลืมตาย 2
どなたか存じ上げませんが、この演奏も10分以上もあります。後ろの犬が可愛い。
日本国内ですと誰かに教わることは難しいと思うので、初心者は動画を見てのコピーが中心になると思います。しかしこの10分以上の曲を頭から丸覚えしていくのは非常に困難です。
10分のものを丸々覚えるというのは落語の「寿限無」を丸暗記するのと同じくらいの難易度です。
ピン音楽の構成を理解するには
私もタイに行き、学ぶまでは、上の寿限無を覚える様に頭から一音ずつコピーしていきました。
しかし、タイに行って師匠にピンの音楽の構成を教わり、すぐに10分、20分の曲も理解出来るようになりました。
ピン音楽を構成する要素として重要なものが4つあります。そしてこれをまず頭に入れておく必要があったのです。
4大構成要素
1.オープニングの独奏部分
これはピンの独奏が始まることで、聴衆に今から音楽が始まることを知らせるものです。音楽本編とはリズムも関係ありません。落語の枕のようなものです。
2.曲部分
これは聴衆が盛り上がれるように演奏される、古典的な民謡のフレーズの引用です。長さは1分いかないぐらいです。落語の「寿限無寿限無五劫の擦り切れ…」のような長い決まり文句です。一回の演奏でこの部分は一つの曲を一回から二回程度演奏します。そして一回の演奏で何曲も演奏していきます。熟練した演奏者だと100曲ほどレパートリーがあるそうなので、その分だけ連続で演奏ができます。
3.曲と曲をつなぐ部分
一回の演奏で曲部分は何曲も演奏されます。その間のつなぎとなる部分です。ピンの音域の中を高音域、中音域、低音域と三つに分け、その三箇所を上、中、下と移動するイメージで演奏されます。
この部分はピンの演奏時間の割合の大半を占めます。回数も同じフレーズを何回も多用しますので、この部分だけで、いくらでも時間を稼ぐことができます。エレキギターの早弾きエクササイズのようなものもあります。どの流派もだいたい共通しているので、覚えてしまうと習得は早いです。
4.終わりのアウトロ部分
たいていどの流派もそれぞれ決まったフレーズで終わります。これは一緒に演奏しているメンバーが曲の終わりのタイミングを理解するためです。このフレーズを弾かないと終わることはできません。落語のオチみたいなものです。
この4要素を演奏者は即興的に構成して演奏していきます。
即興のプロセスは下の図のようになります。
わかりにくいかもしれませんが、すいません。
次回へ続く
このようにピンの演奏は最初から最後まで決まっているのではなく
構成要素を使って作られていることがわかりました。
しかし、現時点ではどこが曲なのか、つなぎ部分なのか、フレーズの切れ目はどこかわからないかと思います。
その部分を次回、動画(実際の演奏)を通して解説しようと思います。